専修学校には八つの分野がある
専修学校は便宜上、(1)工業、(2)農業、(3)医療、(4)衛生、(5)教育・社会福祉、(6)商業実務、(7)家政、(8)文化・教養の8分野に分かれています。
この分野がさらに細分化され、あらゆる職業をカバーした学科に区分けされているわけです。
ですから分野別、学科別の学生・生徒数の増減である程度、時代の流れを読むことができます。
では次に、八分野の主な設置学科と、学生・生徒数の動向をみてみましょう。
工業分野: 基幹学科から最新学科まで
日本が世界をリードする工業国家に発展してきた過程で、この分野の専修学校が果たした役割は計り知れません。
大別すると(1)測量科、(2)土木・建築科、(3)電気・電子科、(4)無線・通信料、(5)自動車整備科、(6)機械科、(7)電子計算機科、(8)情報処理科、(9)その他の学科、に分かれます。
土木・建築・電気・機械などの基幹学科だけでなく、情報処理学科や生命工学(バイオテクノロジー)科など先端技術分野の学科まで設置し、広範な分野に中堅技術者を送り出しています。
学生・生徒数は、八分野中のトップで、近年の増加ぶりも群を抜いています。
情報処理科の学生数が7万5000人と最も多く、全体の43%を占めます。
次いで土木・建築科の2万4000人(14%)、電気・電子科1万8000人(10%)などとなっており、情報化時代を反映して情報処理科や電子計算機科、電気・電子科で学生数の増加が目立ちます。
課程別では、専門課程の学生が15万8000人で91%を占めています。
また高等課程は1万5000人で、一般課程は700人とごく少数。
修業年限別では、2年が最も多くなっています。
工業分野は公共性の高い分野であり、資格や検定制度が確立しているのが特色です。
このため、多くの学科は通産省、運輸省、建設省など所轄省庁の指定を受け、これらの学科はカリキュラムも標準化されています。
農業分野: 日本農業の活路を切り開く
日本は食糧の大半を輸入に頼り、国内の農業就業者数は一〇%に満たない状態です。
今後、さらに農業生産物の輸入の比率は高まることが予想され、日本の農業施策は大きな転換を迫られています。
こうした中で日本の農業は、(1)後継者の育成、(2)生産性の向上、流通システムの合理化、などを通じて安定した食糧自給を確保するとともに、(3)農業を軸にした第三世界に対する開発援助などを課題として抱えています。
農業分野の専修学校は全国でも13校しかありませんが、国内の農業後継者や農業指導者を育成するとともに、海外の開発協力者や農業後継者などの育成に努めています。
学科のタイプとしては農業全般にわたるものと、食肉や造園、園芸、菌じん(しいたけ)栽培、バイオテクノロジーなど、特定の分野を対象としたものとがあります。
学生・生徒数は1500人程度ですが、それぞれに特色ある学科を設けて、先の課題に挑んでいます。
課程別の内訳をみると専門課程が13校で約1300人、高等課程が3校で約260人となっています。
医療分野: パラメディカル部門のスタッフ養成
現代の医療は、チーム医療の時代を迎えています。
医療の現場をみると、臨床検査技師や診療放射線技師などが診断に必要なデータを提供し、医師は看護婦の補助を得ながら、それらのデータによって診断し、治療するのが一般的です。
薬に関しても薬剤師が配され、身体の機能回復については理学療法士や作業療法士が専門職としてあたり、
歯科の分野でも歯科技工士、歯科衛生士、歯科医師とそれぞれの役割分担がはっきり分かれるなど、医者ひとりでは対応が不可能な時代になっています。
また、今日では東洋医学が見直され、あんま・マッサージ・指圧師、はり師・きゅう師などに対する需要も増大しています。
これらの医療スタッフのうち、医師・歯科医師・薬剤師は大学がもっぱら養成にあたっていますが、その他の専門職の養成は専門学校が中心になっています。
医療分野の専門学校は資格・免許との関係上、所轄は厚生省あるいは文部省となっています。
学生・生徒数は14万4000人に及び、八分野の中では工業分野に次いでいます。
学科別にみると看護科が7万2000人でほぼ半数を占め、以下准看護科2万6000人(18%)、歯科衛生科1万1000人(8%)、歯科技工科6500人(4%)、臨床検査料6200人(4%)、はり・きゅう・あんま科6000人(4%)など。
課程別では専門課程が81%を占めて約12万人、高等課程が2万8000人(19%)、一般課程はごく少数です。
国公立の学校が多いのもこの分野の特色で、学生・生徒数の3割、約4万人が国公立生で占められています。
修業年限は学科によって異なりますが、普通は2〜3年です。
衛生分野: ヘアとフード業界に人材を送る
理容・美容関係と栄養・調理関係が、衛生分野として一括されています。
栄養・調理関係は「衣・食・住」の「食」を担当する職種で、健康で豊かな食生活が求められる今日、その重要性は高まる一方です。
理容・美容関係についても、単なる身だしなみだけではなく、ヘアにファッション性をコーディネートさせた、いわゆるトータル・ファッションの時代に入り、広い意味での「衣」生活の重要な演出者になっています。
この分野も資格と直結していて、それぞれ栄養士・調理師、理容師・美容師の資格取得が第一目標となります。
これらの資格はすべて厚生省が管轄しているため、この分野の専修学校は厚生省の認可を受けています。
カリキユラムは厚生省令によって定められており、理容・美容・調理は300時間以上、栄養は62単位以上を履修しなければなりません。
また、教科内容と時間についても細かい定めがあります。
5万4000人の学生・生徒数のうち、調理師科が2万2000人(42%)でトップ、次に美容師科の1万6000人(29%)が続きます。
さらに栄養士科は9000人(17%)、理容師科は4000人(7%)と少なくなっています。
この分野は高等課程の比重が大きいのが特徴で、全体の生徒数の33%(1万8000人)に達しています。
学科別にみると調理師科が37%(8000人)、美容師科では39%(6000人)、理容師科は51%(2000人)が高等課程の生徒ということになります。
修業年限は栄養士科が2年以上、調理師科、理容師科、美容師科が1年以上とされ、調理師科の79%(1万8000人)、理容師科の96%(4000人)、美容師科の88%(1万4000人)は一年課程の学生・生徒で占められています。
教育・社会福祉分野: 厳しくなる教育者としての就職
教員と保母の養成を主に担ってきた分野です。
教育職員(教員)免許のうち、小学校・中学校・幼稚園・養護教諭二級普通免許、盲学校・聾学校・養護学校教諭1級・2級普通免許は、
大学以外に文部大臣の指定する教育養成機関においても免許状の授与が認められ、実際にはこの分野の専修学校および各種学校でも教員の養成が行われています。
一方、保母に関しては厚生大臣の指定校で養成され、大学以外に専修・各種学校でも指定を受けているところが多くみられます。
現在、教員養成機関として専修学校に開設されているのは、幼稚園教員養成科、小学校教員養成科、養護教員養成科、中学校(音楽)教員養成科の四種類。
学校数も少なく、学生数は5900人あまりで、このほかに保母関係が8700人となっています。
教員・保母ともに児童人口の減少によって、学校・保育所などに就職することが年々困難になっていますが、逆に高齢化の進行により、高齢者や病人の介護に携わる専門職が求められるようになり、
社会福祉士と介護福祉士の資格も六三年から新設され、この分野の重要性があらためてクローズアップされています。
商業実務分野: 一般教養も含め、幅広いビジネス教育
ビジネス全般の実務教育を専門に行う分野です。
最近は伝統的な経理・簿記だけでなく、秘書や情報処理、旅行・観光、不動産などのサービス業全般に及ぶ広範な人材養成をめざしており、学科も多岐にわたっています。
また業務の専門化や高度化、OA化(オフィス・オートメーション)や国際化などに対応して、教科は専門知識だけでなく、
一般教養を含めた周辺分野まで幅広く教育する傾向にあります。
この分野も資格・検定と関連が深いのですが、公認会計士や税理士などの「部を除けば、その資格がないと関連する業務に就けない、といった性格のものは少なくなっています。
しかし、資格の取得は技能レベルの証明になり、就職の際にも優遇されるため、簿記やタイプ・秘書・英語・情報処理・ワープロ・販売士などの検定の受験にも力が入れられています。
学科別にみると、経理・簿記科が3万9000人(32%)と最も多く、商業科が2万6000人(3%)、次いで秘書科の1万5000人(12%)。
経営科は8000人(7%)で、逆にタイピスト科などは800人と少なくなっています。
最近の傾向としては、商業実務全般を教える総合ビジネス系の学科が増えており、課程別では専門課程が82%(10万人)、高等課程が17%(2万人)、一般課程は1%弱(1000人)です。
家政分野: 世界のファッションをクリエートする
日本が世界のファッションリーダーの一員に成長するに際して、この分野は中心的な役割を果たしてきました。
各種学校時代から数えれば服飾教育の歴史は古く、高い技術に裏づけられた教育ノウハウを持っている学校が多数あります。
また、業界の多様化に対応して、学科も伝統的な洋裁・和裁・編物にとどまらず、企画から生産・流通まで非常に広範多岐にわたっています。
この分野は技能やセンスが重んじられ、ほかの分野はど資格・検定が豊富ではありませんが、それでも洋裁・和裁・編物検定はこの分野の大きな目標とされています。
さらに、サービス化の進行とともに、最近では縫ったり編んだりする教育より、いかに消費者のニーズをとらえ、企画し販売するかにウエートが移ってきています。
学生・生徒数は8万4000人あまり。
これまで毎年減少が続いていましたが、最近はまた微増の傾向にあります。
最も多いのは和洋裁科で6万6000人(78%)、あとは家政科8300人(10%)、編物・手芸科3000人(4%)、料理科2900人(4%)、家庭科1800人(2%)といったところ。
衛生分野と同様、この分野も高等課程の生徒が多く、全体の37%(3万1000人)を占めています。
また専門課程も55%(4万6000人)、一般課程も8%(7000人)に達するなど中卒後のコース、高卒後のコース、その他のコースと多様なコースを設置しています。
さらに修業年限別にみても、二年制の学生・生徒数が36%で、三年制が44%、一年制も18%を占めるなど、学習者の目的、レベルに応じてフレキシブルな服飾教育を展開しています。
文化・教養分野: 芸術と語学が主流、理論より実技に比重
以上の7つの分野に含まれないものはすべて、文化・教養分野に入れられています。
ここには広範な学科が含まれていますが、大別すると、
(1)音楽科、(2)美術科、(3)デザイン科、(4)演劇・映画科、(5)写真科などの芸術関係、(6)外国語科、(7)通訳・ガイド科などの外国語関係に分かれます。
芸術関係の学科は、芸術理論を学んだり芸術家を育てることよりも、専門の技能を生かして産業界で活躍する人材の育成をめざしています。
また、外国語関係も伝統的な大学・短大の語学教育とは異なり、役立つ語学の修得を目標とします。
国際化が進み、語学力を身につけた人材が求められる一方で、簿記や秘書、情報処理などの関連知識も欠かせないものになっており、周辺知識を含めて幅広く教育しています。
学生・生徒数は13万8000人と専修学校八分野の中では第3位ですが、このうちの38%にあたる5万2000人あまりを予備校関係が占めています。
その他の学科で多いのはデザイン科の2万7000人(20%)、外国語科の1万8000人(22%)などで、あとはどの科も2000〜6000人程度です。
課程別では専門課程が57%(7万9000人)、高等課程が3%(4000人)、そして予備校が一般課程として認可されている関係から、一般課程の生徒が40%(5万5000人)に達しています。
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